2638A Hydra シリーズ　III データ収集システム／デジタルマルチメーター

工業用熱電対の正確な測定

2638Aで使われているユニバーサル入力コネクターはフルークが特許を取得しており、このクラスのほとんどの機器よりも正確な熱電対の測定が可能です。 ユニバーサル入力コネクターは14種類の一般的な熱電対に対応しています。 2638Aには温度にフォーカスしたメニューがあり、温度のバリデーションに最適です。 温度の分析やバリデーションの前に多数の熱電対を既知の熱電対に対してゼロ調整する必要がある場合、2638Aなら参照チャンネルの読み値を全てボタン1つで標準化し、参照値に対するオフセットを対応するデータ・ファイルに保存することができます。 またHydra シリーズ III なら、チャンバー試験やAMSガイドラインに則った熱処理試験、米国連邦規則21条に基づいた温度機器のバリデーションなども簡単に行えます。

ユニバーサル入力コネクター

ユニバーサル入力コネクターはリレー・カードが装着された2638Aのスロットに差し込みます。 ユニバーサル入力コネクターの入力チャンネル数は22です (ユニバーサル入力22および低負荷電流専用チャンネル2)。 各入力コネクターにはCJC (冷接点補償) 器が付いており、工場で校正されています。 入力コネクターには校正日と入力コネクターのシリアル番号がプログラムされており、2638Aに取り付けた時に読み取られます。 この情報は設定ファイルに保存され、関係するスキャン・データと併せて試験の設定から確認することができます。 規制の厳しい業界においては特に、トレーサビリティの保証に有用です。

20 チャンネルや60 チャンネル、時にはそれ以上のチャンネルの配線やシステム設定を行うのは時間がかかります。 ユニバーサル入力コネクターを使ってシステムの配線を行えば、取り外しも簡単ですし、別の場所で使いたい場合には別の入力コネクターと接続し直せばいいのです。

他のデータ・ロガーだと、入力と信号調整モジュールを直接接続しなければなりません。 その場合、別の場所で別の試験を行うには、配線を取り外したり、別の信号調整モジュールを使用したりといった手間がかかります。 Hydra シリーズ III なら信号の調整は全て、入力コネクター側ではなくメインフレームの内部で行われます。

例えば配線済みの入力コネクターをそのまま試験現場に置いておいて、いつでもすぐに試験を始められる状態にしておく、といったこともユニバーサル入力コネクターが複数あれば可能です。 その現場のデータが必要な時には、コネクターを差し込んで保存されている設定ファイルを読み込むだけです。

チャンネルは拡張可能

2638Aには、背面パネルに1台につき3つのスロットがあります。 各スロットにはリレー・カード（取り外し可能）と22チャンネルのユニバーサル入力コネクターが取り付けられます。 メインフレームごとに、22チャンネルから66チャンネルの間で3種類の構成が可能です。 つまり、ベースとなる22チャンネルに、必要に応じて22チャンネルずつ追加することができます。 チャンネル数に応じて構成を変えることができるので、コスト・パフォーマンスにも優れています。

カラー・グラフィック・ディスプレイ、使いやすいメニュー

シンプルなメニュー構成なのでチャンネルの構成や試験の設定も簡単に行えます。 フルカラーのTFD（薄膜ダイオード）大型ディスプレイにより、包括的で分かりやすいデータ表示、簡単なメニュー・ナビゲーションが可能になりました。

使用中のファンクション・キーはバックライトが点灯するため、どのメニューがアクティブかすぐに分かります。 2638Aがスキャン、モニター中またはDMMモードのデータを記録している時にはRecord キーのバックライトが点灯します。 これによってデータが記録されているかどうかもすぐに確認することができます。

チャンネルのコピー & ペースト機能は何度もチャンネルを設定しなければならない時に便利です。 ディスプレイ上部のメニュー・バーを見れば、設定プロセスのどの部分なのか確認することができます。 データはボタン1つで確認できます。 全チャンネルのデータ、アラームをクイック・ビュー・モードでページ毎に表示したり、チャンネルやチャンネルの統計値を個別にスクロールして確認したりすることができます。 統計値には、変化率、最大値、最小値、標準偏差、平均値、サンプル数、p-p値などが含まれます。

言語サポート

ディスプレイに表示されるメニューおよびデータは8カ国語に対応しています。 表示言語は機器設定メニューで変更することができます。 対応言語は、英語、日本語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、韓国語、中国語、ロシア語です。

リアルタイム・グラフ表示

最大4チャンネルのデータを同時にグラフ表示することができます。 チャンネルを選択するだけで、測定値のリアルタイムのグラフが見れます。 グラフは表示値に最も適したスケールに自動調整されます。 必要に応じてボタン1つでズームを変更することもできます。 履歴モードでは、画面をスクロールするとスキャン・ファイル中の以前に収集したデータを表示することができます。PCや高額なグラフ・プログラムは必要ありません。

スクリーン・ショット機能

正面パネルのボタン1つで2638Aのスクリーン・ショットを撮影することができ、撮影した画像はjpg形式でUSBメモリに直接保存されます。 どの動作モード中でも、簡単にトレンド・グラフやデータを表示することができます。

アラーム設定

各チャンネルで以下のように2つずつアラームを設定することができます。 High-High,High-Low.Low-Low - 高、高 - 低、低 -低など。 2638A はスキャン時にアラーム設定値との比較を行い、 範囲外の値はディスプレイとデータ・ファイルに通知されます。 6つのTTLアラーム出力のどこに対してもアラームポイントを指定することが可能です。

演算チャンネル

mx + b ゲインとオフセットの計算を用いて各チャンネルの測定値のスケーリングおよび記録を行うように設定することができます。この設定はチャンネル設定メニューで行えます。 さらに2638Aには20チャンネルの演算チャンネルが搭載されており、アラーム設定やより複雑な計算も可能です。結果はスキャン中にデータ・ファイルに記録されます。 各チャンネルの結果を別の演算チャンネルの変数として使用することもできます。

デジタル・マルチメーター機能

Hydra シリーズ IIIには高精度 6.5桁デジタル・マルチメーターが内蔵されており、2638Aをデータ収集システムとして使用しない場合も、単純にマルチメーターとしてご利用いただくことができます。 正面パネルには通常のデジタル・マルチメーター（DMM）と同じような入力端子が並んでおり、DMM機能専用のメニューからDC電圧、DC電流、AC電圧、AC電流、抵抗、周波数、温度（熱電対、測温抵抗体、サーミスター）の測定が可能です。 DMMの測定値を別のデータファイルに記録して後で見ることもできます。 また、メイン・ディスプレイに統計値やグラフを表示することもできます。

USB と内部メモリ

Hydra シリーズ III には20 MBのメモリが内蔵されており、57,000件のデータと構成ファイルを保存することができます。 これだけでもかなりの容量ですが、2638AにはUSBポートが搭載されているため、USBメモリにデータを保存することもできます。データ・ファイルや構成ファイルのUSBメモリからPCへの移動も、2638Aのファイル管理メニューで簡単に行えます。

メモリ管理

正面パネルのMEMORY キーを押すと、データ・ファイルおよび設定ファイルの管理用の簡単なメニューが開きます。 内部メモリまたはUSBメモリから以前保存した設定ファイルを選択すれば、そのファイルを読み出すことができ、すぐにスキャンを始められます。 内部メモリに保存したデータをUSBメモリに移して、PCで分析したり、別の2638Aで使用したりするのも簡単です。 PCとHydra シリーズ III を直接接続しなくても簡単にデータの移動が行えます。

停電への対策として、電力の復旧後すぐに停電前と同じ設定でスキャンを再開することができるメニューがあります。 これは2638Aのデータ保護機能のほんの一例です。

トリガーおよび分解能

スキャン機能では、以下のような項目を設定することができます：

• 外部トリガー（背面パネル）

• リモート SCPI コマンド

• アラーム・トリガー

• タイム・インターバル・トリガー

• 手動トリガー（正面パネルから操作）

測定分解能は2638Aで管理することができます。 高速、中速、低速 (4.5、5.5、6.5 桁) から選択することもできますし、 必要に応じてチャンネル毎に測定スピードを変更することもできます。

トータライザー

背面パネルのトータライザー入力により、スキャン回数をカウントしデータ・ファイルに記録することができます。 トータライザーは 1,048,575 までカウントすることができ、正面パネルまたはリモート・コマンドからリセットできます。

統計機能

各チャンネルの統計値はいつでも確認することができます。 スキャン中でもモニター中でも、DMMモード中でも、変化率 (毎分または毎秒)、標準偏差、最小値、最大値、平均値など、全てボタン1つで確認できます。

接続

USB接続 (仮想シリアル・ポート)、LAN接続が搭載されており、社内ネットワークやPCに簡単に接続できます。 必要に応じて、専用のDAQ ソフトウェアをお使いいただくか標準 SCPI コマンド・セットでインターフェースを開発してください。Lab View ドライバーや Indusoft Web Studio もご利用いただけます。

国際安全規格 CAT II

現場での測定に使える安全規格カテゴリー II の汎用ポータブル・データ収集システムはHydra シリーズ III だけです。 他のデータ・ロガーは安全規格でカテゴリー II に分類されておらず、現場での測定には注意が必要です。 フルークは計測の安全性にもしっかりと取り組んでいます。

データ保護

2638Aには、規制の厳しい業界では特に役立つ、トレーサビリティの保証に関するメニューが搭載されています。 2638Aでは、ユーザーのレベルをアドミニストレーターと通常のユーザーに分け、アドミニストレーター1人には最大5人のユーザーが割り当てられます。 システムはオペレーター毎のデータを記録します。 設定ファイルにも試験結果のデータにもユーザーのIDとタイムスタンプが付与されます。 ゲスト・ユーザーは保護されている設定ファイルを使用することはできますが、変更を加えることはできません。また、試験結果にはゲストの情報は付与さません。

校正

2638Aの出荷時には校正レポートが添付され、製造段階における全測定ポイントが掲載されています。 認証校正成績書が必要な場合には注文時にご指定ください。 2638Aの校正は簡単です。正面パネルから、またはMET/CAL 校正管理ソフトウェアを用いてリモートで校正メニューにアクセスする際にはパスワードが必要になります。

内蔵リレー・メンテナンス・カウンター

2638Aのアイソレーションと精度を維持するためのキーは内臓の高品質の切り替えリレーです。これらのリレーは、使用時間の増加に伴い、品質が劣化してきますので、リレーボードそれぞれにカウンターを内蔵しています。これにより、ユーザがいつボードを置き換えるのがお勧めなのかを知らせます。

大規模データ収集システム

フルークの DAQ アプリケーション・ソフトウェアがあれぱ、200チャンネル、2,000チャンネルのシステムの構築も可能です。 DAQ アプリケーション・ソフトウェアのバージョン6.0以降であれば、フルークの全データ収集製品(NetDAQ® ネットワーク・データ収集装置、2680 シリーズ・データ収集システムおよびHydra III) を小規模または大規模データ収集システムに関連付けることができます。

ご自身でシステムを構築される場合はLabView ドライバーをお使いください。 またはフルークのDAQ ソフトウェアと Indusoft WebStudio HMI ソフトウェア・プラットフォームを使って、フルークのデータ収集製品とのプロセスおよび通信インターフェースを作成することができます。

トレンド・リンク・ソフトウェア

別売のトレンド・リンク・ソフトウェアは、包括的かつ強力なトレンド・プロット・ソフトウェア・パッケージです。 リアルタイムまたは過去のデータをチャート・レコーダーのような画面で表示、分析することができます。 見たい部分を拡大して表示したり、ズームアウトして長期のトレンドを見たりすることもできます。